あの頃…
病院にいると本当に時間があっという間に過ぎていく

海斗について小児科や整形に顔を出し、ICUの患者を診て、外来に入って

医局の席に座る瞬間が一番息をつけるんじゃないかと思う

ふと外を見れば、また夕日だ

ゆっくりと沈んでいく夕日がICUを照らす中

静寂を破るようにホットコールが鳴り出した

一瞬にして緊張感に包まれる医局

受話器を取ったのは神宮寺

「黒崎病院高度救命救急センター」

よく舌をかまないよなと思う早口もそろそろ聞きなれた

ポケットからペンを取り出してメモの用意をする

「どうぞ」

短い承諾の言葉とともに電話が切れ、医師と看護師が一斉に受け入れ態勢を取り始める

医局を飛び出して階段を下りれば、ICUにいた海斗も丁度出てくるところだった

看護師にいくつか指示をする彼は、でも全く焦っている様子はない

やっぱりその差は大きいものなのだとふと思った
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