あの頃…
「立花、もういい」

「嫌です!!」

こうして考えると指導医である彼の言うことを聞いたのは、数少ないような気がする

「立花!」

響いたのは海斗の少し大きな声

思わず動きを止める

途端に響く機械音

この音は、嫌いだ

「ご家族に会わせてあげましょう、立花先生」

静かにそう言ったのは神宮寺だ

その言葉にゆっくりと視線を上げれば、漆黒の瞳が見下ろしてくる

「ご家族、お呼びして」

漆黒の瞳から移す視線の先には、駆けつけてきた家族

その中の小学生の少女で視線が止まる

「ママ…」

頼りなげにつぶやいた少女の声が、姿が、昔の自分と重なったような気がして

無意識に息を呑む

倒れないように、泣かない様にぎゅっと手を握りしめる


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