あの頃…
小刻みに揺れる肩に、小さく息をつきながら

何をやってるのだろう、と自問する

らしくない

そう言うのは、諦めに満ちた自分

でも、放っておけないのだから仕方ない

「立花、焦るな。黙ってたってそこら辺の医者より数段上に引き上げてやる」

絶対に

遠くに聞こえる車の音が、でもこの空間だけ切り離されたようだ

しるふを、このまま真っ白なまま医者として育てるためなら

そのために面白くもない医者の道に進んだのなら

自分の選択は間違っていなかったんじゃないかと思える

自分が歩むことのできない道をしるふが歩んでくれるのなら

それでいい

そのためならどんな盾にだってなってみせる

その陰でこの真っ白な花が咲き誇っていてくれるなら

「覚えておけ。どんなに頑張ったって救えない患者はいる。でも、全力で患者に向き合うことはいつだって出来る」

きっとそれが助けられなかった患者への一番の供養

だから

「本当に独りでいなくなる癖、どうにかしろ」
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