あの頃…
探すのは結構大変なのだ

「…せっかく黒崎先生は根は優しいんだと感動してたのに」

最後の最後にどうして

目の端にたまった涙をぬぐいながら涙声のしるふが小さく唸る

「当たり前だろう。こっちだって暇じゃないんだ」

居場所を決めてほしいほどだ

「それと言っておくが、」

ゆっくりと見上げてくるブラウンの瞳は、ほんの少し赤い

「高くつくからな、この間といい今回といい」

これだけ走らされて

不本意だがたぶん心配して

「…やっぱり鬼ですね、黒崎先生」

そう言って小さく笑った彼女に

そういえば最近笑顔を見ていなかった、なんて思う

それが一つの基準か

と少し気を付けてみようと一人思う

「そういう立花はじゃじゃ馬だからな」

この件でNOとは言わせない

「せめて小悪魔くらいにしてくださいよ」

「断る。そんな可愛いもんじゃない」

そう言って踵を返す彼は、でもすぐに立ち止まって

「何してる。帰るぞ」

そう声をかけてくれる


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