あの頃…
そしてあっという間に四十路が来て、気がついたらもう半世紀生きている、なんてことになっているのだ

「出来ることなら太く短く生きて、死にたいもんだけどな」

このご時世、それは実は難しい

「ダメですよ、黒崎先生は黒崎病院のこれからを担うんですから」

一応、跡取りなんですよね?

相変わらず失礼な発言である

ふとあげられた漆黒の瞳は、少し細められている

「黒崎病院は継がない」

断言というか、宣言

「え、継がないんですか」

初耳

「俺がいつ、黒崎病院を継ぐなんて言った」

「継ぐとは聞いていないですけど、継がないとも聞いてないです」

だから驚き

「黒崎病院に勤めてて、跡取りだって言ったら継ぐって思うじゃないですか、普通」

それが医者じゃなくて他の仕事に就いているのなら話は別だけど

「黒崎病院にいるのは、不可抗力と不本意の結果だ。昔は違う病院に勤めてた」

「黒崎先生が黒崎病院以外に勤めてたんですか?」

なんか、変


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