あの頃…
今は、彼らの理想通りにならないことが、せめてもの抵抗

慣れと諦めと

その二つしかなくなってしまった

だから純粋に人を助けたいと思って医者になったしるふは、

真っ白で

真っ直ぐで

ただ患者を助けることだけを考えていて欲しい

視たくもないものなど、何も知らずに

「でも、医者になったことを後悔はしてないんですよね」

向けられるブラウンの瞳は、いつだって澄んでいる

笑う瞳は、無邪気だ

「だって、黒崎先生患者さんの前では優しいですもん」

少なくとも嫌々医者になって、仕方なく医者をしているわけではないとしるふは思っている

だからどんなに鬼だってついて行こうと思った

「黒崎先生は、ちゃんと医者ですよ」

名誉や地位だけを気にしている他のどんな人よりもちゃんと医者だ

もしかしたら誰よりも医者としてあろうとしてるのかもしれない

彼らに抵抗するために

たとえ、その手段だったとしても海斗が患者ときちんと向き合っていることは

黒崎病院の全員が知っている

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