あの頃…
海斗の瞳が細まると同時に眉が寄る

「え、何って。黒崎先生を黒崎病院の跡取りとしか見てない連中ですよ」

もっというならば親の七光りだとかコネ入社だとかほざいている奴らだ

ブラウンの瞳と漆黒の瞳が交差して、海斗の動きが一瞬止まる

でも次の瞬間には、快活に笑う

「ちょっと!人が真剣に怒ってるんです!笑わないで下さいよ!!」

心外だわ!

「立花は本当に真っ直ぐだな」

睨み付けて返ってきたのは、そんな穏やかな声音

だからこちらだって動きを止めずにはいられない

言われた意味がいまいちわからなくて

何か言い返してやりたいのに、そう言えば海斗のこんな風な笑顔を見るのは初めてだ

なんて不覚にも思ってしまったから

「く、黒崎先生にだってもちろん頭に来てますからね!?きっと参考書一回開いただけで医学部合格とか言うんでしょう!?」

しかも授業とかサボり気味だったんだ!!

「残念。授業は真面目に受けてた」

親の七光りだとか言われる位なら、さすが黒崎病院の跡取りと言われていた方がまだましだったから

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