あの頃…
「徹底してますね」

そこまでぶれないと称賛に値します

「どうやってあいつらの思う様に生きないかが原動力だから」

そうでもしないと明日にも医師免許が意味を無くしてしまうそうで

それは嫌だと思う自分がどこかにいるのも事実

「一回ちゃんとお話ししてみたいです。黒崎先生をここまで意固地にさせる人たちに」

一体どこまで分かり合えないのだろうか

「世の中には知らない方がいいことがごまんとある」

それがその一つだ

「でもほら、世の中いろいろな人がいますし、出逢っておくだけタダですし」

「立花は知らなくていい」

そう言った海斗の声は、断固としたものがあって無意識に視線を投げる

見つめてくるのは透き通った漆黒の瞳

こんなにも諦めに満ちているのにいつだってこの瞳は真っ直ぐで決してぶれたりしないんだ

だからどうしたって医者でいてほしいと思ってしまう

願わくば、海斗が笑っていられるように

「言ったろう。医者になることだけを考えてればいいって」

それだけを考えていれば必ず腕のいい医者にしてやるからと
< 83 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop