あの頃…
「本当だ。ありがとう」

腕時計を確認すれば、そろそろ診察開始の時刻

「じゃあ、塔矢先生、また」

回診に行くはずの塔矢に別れを告げて佐藤とともに診察室を目指す

あれは頂けないなあ

なんてその背を見つめていた塔矢がつぶやいたことなんて露知らず



「しるふがいないとホント、うちの医局って男臭い」

言葉とともに息をつくのは飯田莉彩

昼食のパスタをつまみながらため息は消えていく

「内科はどうよ。うちとは違ってゆったりと時間が流れるでしょ」

向かい側に座るしるふはかき揚げうどんをすする

「うん。診察してカルテかいて、回診たまにして」

時々他の先生と話をして過ごす

流れる雰囲気は、ゆっくりとしていてERとはまた違う

「あー。早く研修終わんないかな」

そしてERに花を

「医局長がいるじゃん」

苦笑するしるふに言われて

「もちろん。医局長は大きな綺麗な花よ?でも、私の愚痴を聞いてくれるのはしるふだけだもの」
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