あの頃…

立花先生に手を出されるなんてとんでもない

そう言って当然という顔で肩をすくませる

「…と、医局長は置いておいて」

まずは電話番号とメールアドレスないし名刺交換を

一瞬胡乱気な瞳を見せた後、長谷川が気を取り直してしるふに向かう

いそいそと携帯をいじるその後ろ

「お前、邪魔」

相変わらずの低い落ち着いた声と漆黒の瞳

「黒崎先生」

「げ、黒崎先生」

しるふのブラウンの瞳が嬉しそうな色をするのと長谷川が眉を寄せるのは同時

「タイミング悪いですよねー、黒崎先生」

「俺の席の前に立ってるお前が悪い」

そして勤務中に女を口説くな

ふと漆黒の瞳が細まる

「いや、人生チャンスを逃したらそれまでですからね」

「なんて偉そうなことを言ってる暇があるのなら一日でも早く使えるようになって欲しいもんだな」

まだ立花の方が使い物になった

それは、褒めか、と天井を見上げていると背後から

「黒崎先生に一票ー」

にっこりと笑顔を向けてくる神宮寺

「医局長までなんてことを」