あの頃…
「で、立花は何をしに来たんだ」

内科だって暇じゃないだろう

椅子に座りながら向けられる瞳

懐かしい、鋭い、でも怖くない瞳

「これ、塔矢先生が黒崎先生にって」

お届け物です

どさりと机の上に押し付けられた茶封筒を見て

塔矢に向かいの患者の資料を頼んでいたことを思い出す

何も立花に頼まなくとも

「黒崎先生のおっしゃる通り私も暇ではないのでこれで失礼します」

不機嫌そうな声に顔を上げれば、文字通り細められたブラウンの瞳

この瞳が向けられるのは、久しい

「何怒ってるんだ」

「他の病棟に移った元研修医にねぎらいの言葉はないんですか。それを通り越して何しに来たんだって普通聞きます?」

黒崎先生らしいと言えばそれまでなんですが

「立花の所業なら塔矢が面白そうに逐一報告してくる」

時々腹を抱えて笑いながら

だから特に興味はない

「だったらなおさらねぎらいの言葉とか!それから!まだ使い物になったってなんですか!!まだって!!」

失礼極まりない!!

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