あの頃…
「内科にはだいぶ慣れたか」

「あ、はい。塔矢先生いい人だし、他の先生方も優しく指導してくれますよ」

「そう」

ぱらぱらと紙をめくる音が響く

流れる沈黙は、でも心地良い

「…でも、今担当してる患者さんが少し大変で」

昔の資料探したら何かヒントがあるかと思ったんですけど、そう簡単には見つかりませんね

そう言葉が出たのは、相手が海斗だったからだろうか

「参考書を引っ掻き回さなくなっただけ成長したな」

「医者にマニュアルなんて探そうとするだけ無駄だ、そう言ったのは黒崎先生じゃないですか」

そしてそれはその通りだと思う

「それにしても黒崎先生、ここで何してたんですか」

こんなしるふの相談にのっている暇があるとは思えない

「たまたま引っ張り出した資料を見てたら立花が幸せそうに寝てたから」

少し、邪魔してみた

なんて言いながら開いた資料を差し出してくる

「…安眠妨害は食べ物の恨みの次に怖いんですよ」

胡乱気に見上げた瞳は、小さく笑っている、気がした
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