セカンド・ウエディング~彼の愛は濡れる雨のごとく~
「ゴメン…杏…」



杏はその場に全身の力が抜けたように床にしゃがみ込んだ。



そして泣き崩れる。




「…鍵は返す…職が決まれば…携帯に電話入れるから…」



俺はテーブルに合鍵を置いて泣き続ける杏に背中を向ける。



理沙ちゃんを起こすまいと嗚咽を押し殺し、静かに泣いていた。




自分が悲しい時も、理沙ちゃんを気遣う健気な杏の姿。




俺は振り返り、



『俺だって別れたくない』と杏を慰めて抱き締めようと思った。




でも、それは一時しのぎの感情で杏と理沙ちゃんの未来を考えれば、これが一番いい方法なんだと言う結論に達する。











< 141 / 227 >

この作品をシェア

pagetop