セカンド・ウエディング~彼の愛は濡れる雨のごとく~
* * *


「ありがとうございました」



スーツ姿の若い男性が私と次駅に降り立ち、駅員に痴漢した中年男性を引き渡してくれた。



「…今後、痴漢に遭遇したくなければ…女性専用車両のある電車に乗れ」



「あ、はい」


怜悧な切れ長の瞳に鼻筋の通った聡明な顔立ちの男性。


黒地にグレーのストライプの入ったスーツに淡いピンク系のペイズリー柄のネクタイをしていた。



「…私の名前は…」



私は出来たての名刺を渡した。画用紙タイプの紙で角のない白黒の安っぽい名刺だけど…名刺交換の練習と思い、彼に差し出した。



「・・・」


彼は面食らった様子で驚いた。







< 2 / 227 >

この作品をシェア

pagetop