セカンド・ウエディング~彼の愛は濡れる雨のごとく~
彼は上着の裏ポケットから黒の革張りの名刺入れを出して、私に名刺を返してくれた。


「俺の名刺だ」



「ありがとうございます」



互いに相手の名刺を見つめた。



「(株)スイセン生命保険00支社…永瀬杏(ナガセアンズ)…君は保険外交員なのか?」



「あ、はい…まだ…新しく入ったばかりで…これから実践研修に入る所です」


「…ちょうどこの支社の担当区域に俺の会社があるな。まぁ、頑張りたまえ」



「はい」



彼は改札に向かって踵を返す。



「私の支社に近ければ…この駅では…」

私は彼に声を掛けた。

「君のおかげで時間をロスした。取引先に直接向かう…失敬」

彼は振り返ってそう吐き捨てた。そして,私の言葉を待たずに急ぎ足で行ってしまった。




私は彼に迷惑をかけたみたい。




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