紅の約束
「…俺の獲物を取らないで下さいよ。」

階段の上から現れたのは…赤いスーツを身に纏った一人の青年だった。
穏やかな顔つきに美しい銀色の髪。
優しそうな笑みを浮かべているが、その笑みにはいかにも何かが隠れていそうだった。
「お前は…?」
「コードナンバー07 乙怕(イチハ)。よろしく」
「…今のはお前の力か?」
「そう。俺の力は空間を削り取ることができる。…原理は話さなくてもいいかな?」
「ムカつく性格だな」
「仕方ないでしょ?結構周りからは評判はいいんだけどな…君達の名前は知ってるよ」
「…アンタ、嫌い。」
茜は掌を乙怕を向けると、電撃を発した。
「ッ__弱い人は下がっててもらいたいんだけどね…」

一瞬の出来事だった。

茜が乙怕に向けて放った電撃は、気が付くと茜の体を襲っていた。

「ャァァッ…!!」

電撃をまともに喰らった茜は、気を失ったまま階段を転がり落ちた。
「お前…!」
「邪魔はもういない…さぁ始めようか」
「…聞きたいことがある。」
「なんだい?」
「何故お前は…このゲームに参加した?」
「…失った記憶を取り戻す為…かな」
「…お前みたいな奴に…母さんの痛みが分かるかッ!」
「分かりたくないね…そんな薄汚い親子愛なんかッ!!」
乙怕は自分から守零までの空間を削り取ると、一瞬のうちに守零の前へとやってきた。
「_!!」
守零の顔面を狙う鋭く素早い拳を守零は防げず、顔面で受けるしかなかった。
もちろんそれは素早さしかない軽いものだったが、目的は守零の目を打ち、一瞬の隙を得ることだった。
その隙を見て、乙怕は腹に蹴りを入れる。
「どうしたの?君ってそんなに弱かったっけ?」
「……なんかに。」

『お前なんかに母さんの痛みが分かるか!!』

乙怕の拳が、脚が、簡単に守零に防がれていく。

乙怕の呼吸が荒くなっていく。

…乙怕の拳が、脚が、…打たれるようになっていく。

「…コイツ_」


二人の携帯から、着信音が鳴り響く。


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