紅の約束
契約と誓い
一年前 4月20日。

国立病院東京医療センター8階B病棟精神科。
守零は毎日この病院に足を運んでいた。
ーーーこの病院には、守零を女手一つで育ててくれた母親が入院していた。
守零の母親は、約二年前にこの病院に入院し、病棟からかなり離れた部屋で生活をしていた。
彼女は昔、謎の密組織に殺されかけ、その時に脳に障害を持ってしまい、精神が狂ってしまったのだった。
その精神障害は半端な物ではなく、医師の手でも精神を少しの時間安定させるぐらいの施ししかできなかった。

突然笑いだし。泣きだし、幻聴を聞き、叫ぶ。
それでも守零は母親の病気が治ると信じ、毎日母親の様子を見に来ていた。
「あら守零くん、こんにちは」
「…どうも」
母親の病室の手前で、母親担当の看護士に呼び止められた。
「今日はお母さん随分と脳が安定しててね、ガラス越しまでの面会が許可されたわ」
「本当ですか!?」
「えぇ」
看護士は守零の笑顔を見て微笑むと、忙しそうにナースステーションへと戻って行った。

今まで守零の母親は精神障害が酷く、面会が禁止されていた。 そして今日、初めてガラス越しまで近づくことが許されたのだ。
「母さん!」
守零はガラスの向こう側にいる母親を目一杯呼んだ。
母は、穏やかな優しい目で真っ直ぐに守零の方へと近づいて来た。
「母さん…」
「ね…」
「…え?」
「死ね死ね死ね!!死んでしまえ!!!」
ガリガリと彼女はガラスを引っ掻いていく。引っ掻いていくうちに爪はどんどんと剥がれ落ち…真っ赤な血が垂れていった。
それでも彼女は…ガラスに映る守零の顔を引っかき続けた。
「アハハハハ!アハハハハ!あはははは!」
「…母…さん…」
「死ね!死ね!アハハハハ!アハハハハ!」

「どうしたの!?」
先程の母親の担当看護士が、その光景を見て絶句する。
「誰か!今すぐ緊急治療室へ運んで!すぐに安定剤の用意を!」
手早く指示を出す看護士は、冷めた目つきで守零を見つめた。
「あなたの存在はこの人にとってとても毒なの…そして…病院の方にもね」
目の前の光景が信じられない守零は、ただ唇を震わせて、話を聞くことしかできなかった。
「帰りなさい」

母親のもとを離れたくない、もっと近くにいたい…その想いは強く、守零は病院から出ていくことがで
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