赤い結い紐
「悪かったな、黙ってて。

別に騙(だま)すつもりはなかったんだけど、なんとなく言いづらくてな」

「そんな……べつに騙されたなんて思ってないよ」

はっとしたように立ち上がり千華が言った。

「いいよ、気を使ってくれなくても。慣れてるから」

目をそらして呟いた武は、少しずつドアの方にあとずさっていく。

「どこ……行くの?」

一歩ずつ、武との距離を縮めようと、千華が足を動かした。


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