赤い結い紐
「ほんとだよ、怖くないもん。だって武はあたしに優しくしてくれた」

震える指でギュッとつかみながら千華が呟く。

「最初はびっくりしたけど、信じられなかったけど、それでも一緒にいたいと思ったの。

だから、どこにも行かないで、ここにいてよ」

慣れてるなんて、言わないでよ……。

そこまで言ってしまうと、千華の瞳からせきをきったように大量の涙がこぼれだした。

そして子供のように泣きじゃくりながら、武の身体を抱きしめた。

ひょろっとした細い腕なのに、予想よりもずっと力強かった。

武はどうしていいのかわからずに、ただ黙ってその場に立ち尽くしていた。


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