赤い結い紐
しばらくすると、あごの下から聞こえるのは、

泣き声から鼻をすする音に変わっていた。

武はゆっくりと千華の身体を離し、ティッシュを何枚か取って渡してやる。

千華は受け取ったティッシュを一枚に重ねると、

大きく息を吸ってから鼻をかんだ。

そして丸めたティッシュを部屋の隅にあるくずかごに投げ捨てた。

「もう寝るから、おまえも寝ろよ」

なんともいえない微妙な空気に戸惑(とまど)いながら武は言った。

千華は小さく頷いてドアに向かうと、

パタンと閉めて電機を消し、武のベッドに潜りこんだ。


< 114 / 292 >

この作品をシェア

pagetop