赤い結い紐
部屋の前に着くと、ドアが勢いよく開いて千華が飛び出してきた。

勢い余ったせいか、武を確認してからも止まりきれず、胸に鼻をぶつけたらしい。

「どーした?」

問いかける武を見て、

「なんでもない」

鼻を押さえながら首を振ると、武の腕をつかみ部屋の中に引っ張る。

武は千華に連れられるままにベッドに腰を下ろし、持っていた水を渡した。

「ありがと、これ取りに行ってたの?」

「そうだけど。どーかしたか?」

「なんでもない」

うれしそうに微笑んで、ペットボトルに口をつけ、千華はごくごくとのどを鳴らして水を飲んだ。




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