赤い結い紐
「で、なにがあったの? どうせ例の男がらみなんでしょ?」

テーブルを挟んで向いの椅子に座り、由加里が訊いてきた。

「うん、そうなんだけど……」

「いまさら、『なんでもない』とか言うのはやめてよね」

メンソールのタバコに火をつけると、

「あと泣くのも」

そう付け加えて意地悪そうに微笑んだ。

千珠は小さく頷いて、頭を整理する。

「ねえ、もし由加里の彼氏が死んじゃったらどうする? 

その人をものすごく愛してるとしたら」

「『どーする?』って、そりゃ泣くだろうね」

なに当たり前のこと聞くのよ。

そう言って、白い煙を吐き出した。

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