赤い結い紐
「なに? どーしたの、そんなに慌てて?」

「おまえ、胸の下にホクロあるのか?」

武は息を整えて言葉を作る。

「ないよ。前にも言ったじゃん」

きょとんとした顔で千華が答えた。

「ちょっと見せろ」

「やだよ」

ベッドの上に座りなおして、警戒するようにこちらを見る。

「頼む」

「じゃあ見せたら、あたしの言うことも聞いてくれる?」

少し考え込むような仕草を見せてから千華が言った。

「ああ」

「本当に? なんでも聞いてくれるの?」

「ああ、何でも聞いてやるから」

じれたように武が言った。

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