赤い結い紐
「じゃあ、ちょっとそっち向いてて」

千華がTシャツに手をかけて、恥ずかしそうに言った。

武は仕方なくドアの方を向いて、おとなしく待つ。

凛(りん)と張り詰めた静寂(せいじゃく)の中で、

衣擦(きぬず)れの音だけが聴こえてくる。

「いいよ」

囁くような小さな声を聞いて武が振り向くと、

胸を手で隠した千華が顔を赤くして下を向いていた。

流れる黒髪の隙間から見える耳の先までも、ほんのりと赤く染まっている。

膝にかけられた布団の下から、

さっきまで千華が着ていた薄いサーモンピンク色のTシャツが覗いている。


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