赤い結い紐
「手、どけてくれるか?」

ゆっくりと近づいて武が言うと、胸を隠していた腕がそろそろと離れていき、

ポスンという音をたてて布団の上に落ちた。

そして、肩口から流れ落ちる黒髪にかたちどられて小ぶりの胸が現れた。

武はベッドに座る千華の胸に視線を合わせてしゃがむと、左胸の下を注意深く観察する。

「ないよな……」

小さく呟いて、胸の横を通る髪の束を背中側に持ち上げた。

「もー、いい?」

恥ずかしそうに身体を震わせながら、千華が呟く。


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