赤い結い紐
「おや、お邪魔だったかしら?」

武が黙って二つの胸を見つめていると、背後から声をかけられた。

「やだっ」

その声に千華がすばやく反応して、布団を首まで引っ張りあげる。

武はゆっくりと振り返り、声の主をにらみつけた。

「どーいうことだ?」

「なにがだい?」

武の視線を真正面から受け止めてなお、

あっけらかんとした口調でレイラが答えた。

「なにがって、ホクロなんて何処にもないじゃねーかよ!」

武が肩を怒らせて怒鳴ると、

「ああ、そのことかい」

レイラは笑いながら呟き、

「千華、ちょっと後ろ向いてごらん」

と言って、閉じた扇で自分の肩をパシパシと音を鳴らせて叩いた。


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