赤い結い紐
千華は不思議そうな顔をしながらも、

とりあえず言われた通りにおとなしく背中を向けた。

レイラは千華の前まで歩み寄ると、

「ほらっ、ここを見てごらん」

扇の先で千華の背中を指した。

武は半信半疑で近づき、指された場所を覗き込む。

真っ白な背中にひとつ、小さなホクロがあった。

「あるだろ?」

満足そうにレイラが言った。

武は微笑むレイラの笑顔を見て、盛大にため息をついた。

もしかしたら、このため息でいくらか体重が軽くなるんじゃないかというぐらいのものを。

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