赤い結い紐
「そんなわけない。

たしかに左胸の下にあったはずなんだ」

「自信を持って言えるのかい?

あんたの記憶は、本当に間違っていないのかい?」

告げる瞳には、まるで自分が見てきたかのような自信が溢れている。

武が何も返せないでいると、千華の唇から、
「うそ……」

と小さな言葉がこぼれた。

「ねえ、武。そうなの? 本当は背中にあったの?」

もはや胸を隠すことも忘れて、千華が武に詰め寄った。

レイラは武を眺め、相変わらずの微笑でこの空間を支配していた。

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