赤い結い紐
「よう、朝っぱらから派手にやらかしたんだってな」

日本酒の一升瓶を握り締めた頬に傷のある男が、笑いながら話しかけてきた。

あわてて左の頬を手で押さえるが、男は目ざとくそれに気づき、

「俺とおそろいだな」

と楽しそうに笑った。

「ほっといてくれ」

武は視線を合わせることなく、テーブルを囲む椅子のひとつに腰を下ろす。

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