赤い結い紐
ガタン、物音と同時に、

「ひゃー」

という間の抜けた悲鳴が耳に飛び込んできた。

目を開けた武の視界に写ったのは、

雪崩(なだれ)のように崩れた椅子と雑誌の山。

そしてその場に立ち尽くす千華の姿だった。

「なにしてんだ?」

「手伝ってよ。コレが邪魔でドアが開かないの」

千華が泣きそうな声で言った。

武がぼんやりと眺めていると、

「トイレに行きたいの!」

千華が雑誌を床に叩きつけた。

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