赤い結い紐
「その人は見つかったんですか?」
千珠は吸い込まれるように二つの瞳を見つめ、訊いてみた。
「イヤ、もう見つけられないかもしれない」
なにかを思い出したように、武が顔をそらした。
「どうしてですか?
黒髪とホクロが左胸の下にあることしか思い出せないからですか?」
「一緒に住んでる奴に、この前言われたよ。
『顔も忘れちまってるのに、本当に左胸の下にホクロはあったのか?』って。
『そう思い込んでいるだけで、別の場所にあったんじゃないのか?』ってな」
「でも、左胸の下にあったんじゃないんですか?」
問いかける千珠に、ゆっくりと武が首を振る。
千珠は吸い込まれるように二つの瞳を見つめ、訊いてみた。
「イヤ、もう見つけられないかもしれない」
なにかを思い出したように、武が顔をそらした。
「どうしてですか?
黒髪とホクロが左胸の下にあることしか思い出せないからですか?」
「一緒に住んでる奴に、この前言われたよ。
『顔も忘れちまってるのに、本当に左胸の下にホクロはあったのか?』って。
『そう思い込んでいるだけで、別の場所にあったんじゃないのか?』ってな」
「でも、左胸の下にあったんじゃないんですか?」
問いかける千珠に、ゆっくりと武が首を振る。