赤い結い紐
つい一ヶ月ほど前にレイラがどこかから連れてきた自称家出娘の女の子が、

テーブルの上に料理の載ったお皿を並べていく。

武の前に焼き魚を置いて、まだ少し赤みの残る頬をちらりと盗み見たあと、

クスクスと小さく笑って反対側の席に着いた。

周りからはジンと呼ばれている男が自分の左頬の傷をさすりながら、

ご丁寧に今朝の出来事を説明してくれているようだ。

千華(ちか)は

「うんうん」

と耳を傾けて、おかしそうにけらけらと笑っている。

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