赤い結い紐
「さぁね、武でいいよ。それに敬語も使わなくていいから」

「うん、わかった。わたしのことも千珠でいいよ」

グラデーションのかかった液体を口に含み、微笑を強めた。

「千珠か」

「うん」

「仕事はなにしてるんだ?」

「洋服屋さん。今度お店に来てよ。わたしが似合う服を選んであげるから」

「いいよ、べつに」

「だってこの間も、同じ服着てたじゃない。プレゼントしてあげるよ」

だからお願い。

と、千珠が顔の前で拝むように両手を合わせた。

「あんた本当に変な奴だよな」

心底感心したように、笑いながら武が呟く。

「お互い様でしょ」

「ああ、そうだな」

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