赤い結い紐
千珠は武の言葉を思い出して口にする。

「ねえ、由加里」

「ん、なに?」

「涙って、涸れるんだって」

「そーなの?」

「うん、武が言ってた」

「じゃあ水飲めば?」

由加里が冷蔵庫から新しい缶ビールを出して持ってきたので、千珠は少しだけ微笑んで首を振る。

「違うよ。駄目なのそれじゃぁ」

「そーなんだ」

「気が付いたら、涙が出なくなってたんだって……」

そう言ってしまうと、涙が止まらなくなってしまった。

< 169 / 292 >

この作品をシェア

pagetop