赤い結い紐
引き出しの中から新しいTシャツを出してベッドの上に放り投げると、一番上の引き出しを開けてみた。

鈴の入った桐の箱は、最後に見たときと同じ場所で、Tシャツに守られるようにひっそりと置かれていた。

手を伸ばし、箱に触れようとした瞬間、背後に気配を感じて振り返る。

ドアのところで、千華が笑顔を貼りつけて見つめていた。

さきほど着ていたジャージにTシャツ姿とは打って変わって、ミニのフレアスカートにあまり見かけたことのないTシャツ。

「武、準備できたよ」

「ああ、今行くから下で待っててくれ」

「うん、わかった」

素直な返事をして、千華が階段を降りていく。

武は足音を聞きながら、箪笥の引き出しを閉めてTシャツに袖を通し、ジーンズに履き替えた。

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