赤い結い紐
外は夏の終わりを告げるかのように少し肌寒く、太陽が光り輝いていた。

太陽だけがまだ夏の気配を引きずっているようで、今の季節に溶け込めないように感じた。

そう、まるで少し前の自分のように。

今ではジンやレイラに受け入れられ、千華にも、そして千珠にさえ恐れられることなく接してもらっている。

いまだかつて、こんなにも心が休まったことはなかったと思う。

隣を歩く千華の横顔を眺めながら、武は思いを巡らせていた。

それに気づいたのか、千華が微笑みながら揺れていた武の手を握り締める。

そして二割り増しの笑顔を浮かべ、元気よく足を進めた。

武は半ば引きずられる様な形になりながらも、名刺の裏に書かれた地図を見て、店の場所を頭の中で確認した。

たぶん地図を見る限りだと、駅から五分と離れていないだろう。

そう考えて、とりあえず駅のほうにと目的地を定めることにした。

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