赤い結い紐
だんだんと揺れの少なくなるシャツを目で追っていると、後ろから声がかけられた。

「武?」

聞き覚えのない声だった。

「誰だ?」

振り向くのと同時に言うと、さっきいた女の後ろに千珠が立っていた。

「あたしだよ、あたし」

千珠ではなく、前に立った女が言った。

武が不審(ふしん)そうに目を細めると、千珠が間に入って紹介してくれた。

「あの、由加里って言うの。このお店の店長で、友達なんだ」

「そお」

武が呟くと、由加里が「そお」と言って頷いた。

由加里はじっと、武を下から上まで順番に見つめてきた。

今まで何度も感じてきた嫌悪感(けんおかん)さえないものの、種類分けするとしたら好意は感じられなかった。

はっきり言って、嫌な感じだ。

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