赤い結い紐
気がついたときには、店から出て行く武と目が合っていた。

でも武の瞳は怒っているというよりも、どこか楽しげに見えた。

「ありゃ、帰っちゃった」

隣にいた由加里が小さく呟いた。

その言葉で、ようやく身体が呪縛から解き放たれた。

千珠はすばやくクリームまみれの記憶をかき集め、バックルームに行くと、

かばんの中からMDを取り出して武のあと追いかけた……。

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