赤い結い紐
頭から湯気が出そうなほどに怒りを表す千華に手を引かれながら歩いていると、後ろから足音が近づいてきた。

アスファルトがミュールの踵とぶつかって、コツコツと悲鳴をあげている。

ぶつぶつと呪いの言葉のように文句を呟き続ける千華は、その音にまったく気がついていないようだ。

武には何故か足音の主がわかっていた。

足を止めようとした瞬間、

「ちょっと、待って」

かすれた声で千珠が言った。

その声に千華がすばやく反応して、武を庇うように間に立ちはだかった。

「なんなの?」

武のあごの下で千華が言った。

その目は千珠を敵意の眼差しで射抜いている。

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