赤い結い紐
9

MD

結局武は、別の場所で洋服を買わされて家に帰ってきた。

千華は買ってもらったばかりの胸の大きく開いた水色のカットソー、

黒いデニム地のロングスカートを着て、ご機嫌で夕食を作っている。

さっき下におりて行ったら、千華のうしろ姿に向かってジンが、

「似合うねー、かわいいよ」

とインチキカメラマンのような言葉を投げかけていた。

千華も気分がよかったらしく、「そう?」などど、いちいち振り向いてはポーズをとっていて、

そのやりとりは武の視線に気がつくまで続けられた。

たぶんその前にも、幾度(いくど)となく繰り返していたのだろう。

武と目が合うと、

「いつからいたの?」

と顔を桜色に染めて呟いたぐらいだし。

< 204 / 292 >

この作品をシェア

pagetop