赤い結い紐
武はレイラの無言の圧力に追いやられるように席を立ち、千華を手伝ってやった。

そしてお盆をかたづけに行って戻ってきた千華に言った。

「千華」

「なに?」

「かわいいよ」

「えっ?」

「洋服、よく似合ってる」

「ほんと?」

うれしそうに微笑んで千華が訊いてくる。

ほんとに、ほんとうにうれしそうだった。

だから武も自然に微笑みを浮かべる。

「ああ、かわいいよ」

「だってさ」

レイラが後に続くように呟く。

千華は「えへへ」と笑いながら、スカートの裾を引っぱり、カットソーのしわをピンと伸ばして見せた。

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