赤い結い紐
千珠は流れてくるピアノに合わせて口笛を吹きながら、雑誌をめくっていた。

昨日出たばかりのファッション雑誌で、由加里に借りたものだった。

新しくお店に仕入れるものをいくつか選んで欲しいと言われていたので、気にいったものからノートにリストアップしていた。

由加里は雑誌にペンでチェックをしてもいいと言っていたのだが、他人の本にペンを入
れるのは落書きをしているようでしのびない。

部屋を包む音楽はリピートをかけてあるので、何回も繰り返して同じ曲が流れている。

気にいった曲を繰り返して聴くのはいつものパターンだが、たいてい100回も聴けば飽きてしまうのが普通だった。

それでもこの曲だけはすでに100回を超えて、200回目に突入しようとしている。

由加里の買ったCDには、残念ながら歌詞カードは入ってなく、かすれた声で歌われる歌詞はほとんどなんと言っているのやら解読できなかった。


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