赤い結い紐
「あっ、そうだ。ちょっと待ってて」

千華が武の膝の上から跳ね起きて走っていった。

ウサギのスリッパは履いていかなかったので、タンタンタンと階段を降りる音が聞こえてきた。

武は手持ちぶたさになり、ポケットからタバコを出して一本に火をつけ、灰皿を手元に引き寄せた。

いつからか、タバコを吸わないはずの千華の部屋にも灰皿が置かれていた。

それは水色のガラスでできたイルカの形をしている。

見覚えがないので、どこかで新しく買ってきたものかもしれない。

千華がなかなか戻ってこないので、武は2本目のタバコに火をつけた。

それも半分ほど灰にしてしまい、イルカのおなかの辺りでもみ消すと、タンタンタンと駆け上がってくる音が聞こえた。

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