赤い結い紐
「あんた、名前は?」

濡れた服の上からタオルをかけて訊いてみた。

その問いかけに、彼女が初めて顔をこちらに向ける。

真っ直ぐに見つめ返すその瞳の中には、武の顔が映っていた。

「もしかして千夜なのか?」

震えた声で訊いてはみるが、彼女の口は堅く閉じられたままだった。

武はゆっくりと手を伸ばし、肌に張り付いている黒いTシャツの裾(すそ)をめくる。

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