赤い結い紐
「ありがとう」

武が小さく呟いた。

「うん」

「何か欲しいものあるか?」

少し考えて武が訊ねた。

「別にないよ」

千珠が答える。

「どーして?」

「レイラが人に何かしてもらったら、お返しをするのが礼儀だって言っていたから」

「そうなんだ。じゃあさ、明日武の家に遊びに行ってもいいかな?」

「ああ、べつにかまわないけど。そんなことでいいのか?」

「うん、それでね。プレゼントがあるんだけど、貰ってくれる?」

「また俺だけもらうのか? レイラに殴られちまうよ」

武が苦笑まじりに呟く。

「そうなの?」

「ああ、そうなんだ」

「じゃあ、またお酒おごってよ」

「わかった。じゃあ、明日店に迎えに行くから」

「うん、待ってる。おやすみなさい」

千珠が最後の鍵盤に静かに指をのせた。

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