赤い結い紐
千珠は二十代前半ぐらいの髪の短い女の子と、なにやら話しながら楽しそうに笑っていた。

「ちょっと待ってて。あのお客さんで終わりだから。中でタバコでも吸ってなよ」

由加里が、シールだらけのドアを指差した。

武は言われたままに千珠のそばを通り抜け、ドアに向かった。

目が合った千珠が少しだけはにかむように笑顔を見せた。

パイプ椅子に座ってタバコを吸っていると、

「ありがとうございました」

二人のそろった声が聞こえた。

どうやら、終わったらしい。

武がタバコを灰皿で消すと、由加里の後に続いて千珠が部屋に入ってきた。

「ごめんね」

と言って千珠が微笑む。

「千珠、もうあがっていいよ。あとはやっとくから」

タバコに火をつけて由加里が言った。

「うん、ありがと」

千珠は中が透けている透明のバックと、大きな紙袋を持って「行こう」と呟き、外に向かった。
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