赤い結い紐
武は千珠の話に相槌を打ちながら、ぼんやりと歩いていた。

それでも無事に家までたどり着けたのは、日々の散歩のおかげかもしれない。

「ここだよ」

武はドアを開けて、中に入るように促(うなが)した。

「おじゃまします」

千珠が囁くように言ってドアをくぐる。

どうやらレイラもジンも留守のようだった。

武はほっとして、キッチンでペットボトルのお茶を二つ取り出すと、階段を上った。

千珠がきょろきょろしながら、後ろをついてくる。

千華の部屋のドアの隙間からは、微かに灯りが漏れていた。

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