赤い結い紐
「広いんだね」

千珠が言った。

「ああ、昔は何人か住んでいる人もいたらしいんだけど、今は俺と千華とレイラ、ジンって奴が住んでいるだけだよ」

「ふーん、武の部屋は?」

「そこ」

武がドアを開けると、部屋の中はシーンと静まり返っていた。

「おじゃまします」

千珠がかしこまるように呟いて、中に入った。

「悪いけど、椅子もクッションもないから、ベッドに座ってくれる」

「うん、ありがと」

「荷物はそこら辺に置いてくれてかまわないから」

「うん」

千珠はバックを箪笥の前に置くと、紙袋を抱えてベッドに腰を下ろした。

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