赤い結い紐
「いつもの」

テーブル席に注文をとりに来たマスターに武が言うと、由加里がまねをして、

「いつもの」と言った。

マスターが困った顔をして、

「どれのことですか?」

と苦笑いしている。

それを見た千珠が、

「カンパリオレンジでいいの?」

と由加里に訊ねた。

「うん」

由加里がうれしそうに頷いたのを見て、

「じゃあ、二つ」

マスターに告げる。

マスターは営業用の笑顔を浮かべて、カウンターに去っていった。

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