赤い結い紐
武はグラスを傾けながら、千珠と由加里の話に耳を傾けていた。

自分達のお店の話や、最近流行(はやり)のタレントのゴシップ、新しく始まったドラマの話。

ありとあらゆる話題が由加里の口から溢れるように続けられ、千珠がそれに相槌を打ち、たまに質問をするような形で構成されていた。

時折、千珠が心配そうにこちらを見るので、一応武も話を聞いている振りだけは続ける必要があった。

武が三杯目のグラスをマスターから受け取ると、

「ごめん、ちょっとお手洗い」

と言って、千珠が席を立った。

由加里が、「いってらっしゃい」と、手を振って見送っている。

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